Archie Shepp/The Way Ahead


The Way Ahead

私的JAZZ名盤集Vol.1

1. Frankenstein
2. Damn If I know
3. Fiesta
4. Sophisticated lady
Archie Shepp(ts)/Walter Davis,Jr(p)/Ron Carter(b)/
Jimmy Owens(tp) Beaver Harris(ds)/Roy Haynes(ds)

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JAZZを聞き始めて25年。元はといえばロック少年だった僕がジャズの世界に足を踏み入れたきっかけは、山下洋輔さんの書いた「ピアニストを笑え(晶文社)」という1冊の本だった。
何気なく古本屋で手にしたその本は、最高にぶっ飛んでいた。文章表現の自由奔放さは筒井康隆も顔負け。独特のユーモアに満ち溢れ、はちゃめちゃでありながら、しかし非常に計算された展開は、音楽家が片手間に書いたエッセイの域をはるかに超えていた。

いまだJAZZという音楽を一度も聞いた事の無い僕は、読み終えた時には既にこの不思議な音楽の得体の知れない魅力のとりこになっていた。
まずはJAZZというものを聞かねばなるまい。早速 JAZZ雑誌を開き、山下洋輔の名を探すと、大阪は梅田のいんたーぷれい8なるクラブでライブの予定が掲載されている。まずはこの店へ行ってみようと大学に入りたての、純粋・ウブ青年だった僕は梅田へ向かった。

その店は新御堂筋の東側、太融寺の南側という梅田の場末にあった。雑居ビルの1階に看板が出ているが、店は地下1階らしく、急な階段があり、その先には鉄の扉が見えている。 僕は、何か怪しげないけない大人の世界に足を踏み入れるような不安と後ろめたさを感じながら、その重い鉄のドアを開けたのを覚えている。

ドアの向こう側には大音響が鳴り響いていた。たしかアーチー・シェップだったように思う。飾られていたジャケットがカラフルだった記憶があるので「The Way Ahead/Archie Shepp」あたりだったかもしれない。
今ではすっかり馴染みのシェップのサックスも、始めての耳には、不気味に感じられた。店内右手のテーブル席ではこれまた怪しげな中年おじさんが、音楽に合わせて身をよじっている。僕は一瞬"やっぱ帰ろかな"とひるんだが、ここで引いては山下洋輔の音楽が聴けない。気を取り直して、左手のカウンター側の壁際に追いやるように置かれたテーブルにそっと座った。

カウンター席は既に常連らしきお客さんで詰まっていたのだ。カウンターの中では、やたら元気なおばちゃんが常連客たちを相手に笑い転げている。そばには対照的に物静かな黒サングラスのおじさんが、そっと付き添うように立っている。

暫くシェップの棘の立った特徴的な音色に耳を傾けている内、だんだんと気持ち良さが分かってきた。始めて聞くと取っ付きにくいが、はまると止められないというタイプのミュージシャンの筆頭。最近はバラード系の演奏も多く、円熟味に磨きがかかってきているので、入門者には「Blue Ballads」、「True Ballads」、「True Blue」のバラード3部作あたりあたりが本当はお勧めだが、シェップ独特の音が耳に馴染んできたら、昔のインパルス盤も是非聞いてください。Sheppについては、いずれ2枚の超とっておきを紹介予定です。

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