Live!/綾戸智絵


LIVE!

私的JAZZ名盤集Vol.1

ディスク: 1
1.Only You/2.In A Mellow Tone/3.By The Time I Get To Phoenix/4.Tennessee Waltz/5.Give Me The Simple Life/6.Everybody Everywhere/7.Love Letters/8.Route 66/9.Love/10.Georgia On My Mind/11.Over The Rainbow

ディスク: 2
1.Amazing Grace/2.His Eye Is On The Sparrow/3.Your Song~For All We Know/4.That’s All/5.September In The Rain/6.A Song For You/7.Work Song/8.You Are So Beautiful/9.It’s Only A Paper Moon/10.Bridge Over Troubled Water/11.Yozora No Mukou/12.Heart Of Gold

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紀伊國屋で立ち読みをしていると綾戸智絵を特集した雑誌があり、その中に山下洋輔との対談記事が載っていた。いつだったかNHKで二人の共演コンサートを放送したことがあったが、その後の対談だっらしい。

この内容がとても面白い。コンサートでも天下の洋輔に物おじする事なく渡り合う智絵さんにただ者では無いな、と驚いたものだが、なんと智絵さん、演奏中にイキナリ洋輔さんのモノマネで、"グシャゴリグギャーン"とやらかして会場を多いに沸かせたそうだ。
恐るべし、浪速のおばちゃんである。
ところで先日大阪のジャズ喫茶、8のママさんが洋輔さんと知り合った頃の話を書いたが、対談の中で洋輔さん自ら当時の詳細を語っているくだりがあった。

ハチで当時大阪では大御所と目されていた、あるミュージシャンがライブをやっていて、そのセット間の休憩中に、場に居合わせた洋輔トリオ(当時は森山威男と中村誠一のはず)が勝手に出て行って演奏を始めてしまったというのだ。ピアノの弦は切るわ、シンバルまで叩き割って(!)しまったらしい。※弦を切ったり、ピアノのハンマーを叩き折ったりは見たことがあるが、森山さんのシンバル叩き割り打法は残念ながら、まだ見たことがない。

怒った大御所ミュージシャンをよそに、8ママは"オモロイ奴らやないか"と洋輔トリオの味方についてしまったという。

この話はジャズの本質をある意味よく表している。

ジャズの世界ではチャーリー・パーカーの昔から、飛び入り乱入が当り前だったのだ。道場破りみたいなもので、ジャズマンたるもの、売られた喧嘩は買わねばならない。真っ向勝負を受けて立ち、ステージで白黒つけるというのが正しいジャズマンの在り方というものだ。

そして判定するのは客である。客に受けた方が勝ちなのだ。

洋輔さんと共演した智絵さんには、本来のジャズマンらしい大胆不敵さとそれを裏打ちする実力がひしひしと感じられた。
洋輔さんも大変な個性の登場に、冷や冷やしながらも、その出会いを心から楽しんだに違いない。

という訳で、One and onlyな浪速の誇る綾戸智絵の大好きなアルバムがこれ。彼女の魅力は何といってもライブで最大限に発揮される。中でもこの「Live!」は2枚組で余す事無くその魅力を伝えてくれます。歌もピアノも、そして笑かしてくれるあの語りも。
特にGeorgia on my mindのイントロ部分の語りは、大爆笑もの。是非聴いて下さい。