Transition/John Coltrane


Transition

John Coltrane Best Selection

John Coltrane(ts),McCoy Tyner(p),Jimmy Garrison(b),Elvin Jones(ds),Roy Haynes(ds)
Roy Hayens on Dear Lord only <1965.June>

1.Transition / 2.Dear Lord
3.Suite:
a)Prayer and Meditation (Day) / b)Peace And After
c)Prayer and Meditation (Evening) / d)Affirmation
e)Prayer and Meditation (4 A.M.)

ランキング1位の記念に、いずれは書かねばと思っていたJohn Coltranen(ジョン・コルトレーン)の最高傑作を取り上げてみたいと思います。紹介しましょう。《Transition》です。えっ?至上の愛じゃないの?という声が聞こえてきそうですね。
勿論《A Love Supreme(至上の愛)》も音楽を通して神への祈りを表現したエポックメイキングな作品です。間違いなくジャズ史に残る巨大なマイルストーンの一つでしょう。Turning Pointとしての《A Love Supreme》の重要性に異論はありません。

ですが、こと純粋に”音楽“として比較した時、僕にとっては《Transition》は文句なしに《至上の愛》の上位に位置され、今のところトレーンの最高傑作としての地位をキープし続けています。

今のところというのは、トレーンの場合、没後に多くの未発表テープが発掘されており、今後も驚くような録音がCD化される可能性もゼロではない、是非あって欲しい!との思いも込めてるんですけどね。
《Interstellar Space》を超える名盤、《Stellar Regions》も没年1967年2月録音でしたが、発表されたのは1995年で、何故か28年の歳月を要しているのですから。

事実、この最高傑作も、コルトレーンの死後に発表されたんです。これについては生前にトレーンが、アリスに「わしが生きてる間には《Transition》を発表してはならん」と言い残していたという説があります。

不思議ですよね。これほどの傑作を、何故コルトレーン自ら封印したのか?これがタイトルに“《Transition》の謎”とした理由なんです。

さて、問題の《Transition》ですが、ここでのトレーンは至上の愛で見せたスピリチュアルな奏法を更に推し進め、それこそ生みの苦しみを思わせるフリーキーなトーンを発しながら、音楽の高みを極めようとする姿勢が胸を打ちます。

全体の曲想から受ける完成度・高揚感・メンバー間の緊張感、どれをとっても、コルトレーンの、というより、ジャズという音楽フォームによって到達されたスピリチャルな表現の最高峰ではないか、というのが僕の評価です。

タイトル曲「Transition」は正直な所、聴く人にも体力・気力を要求しますが、聴き終えた時には、凄まじいコルトレーン・カルテットのエネルギーを分け与えられ、自分自身も充電されたような気がします。

このパワーと刺激溢れる1曲を聴き終えた後には、「Dear Lord」という、打って変わって静的な慈愛に満ちた極上のバラード演奏が続きます。これまたバラード演奏の極致とも言える素晴らしい演奏で、1曲目の嵐の様な演奏の後だけに、そのリリカルな美が対照的に際立ちます。この曲だけを聴けば、1962年の傑作《Ballads》録音時の未発表曲かいなと思われるかもしれません。

「Dear Lord」に心癒された後の、ラストチューンが5つのパートから成る壮大な「Suite(組曲)」です。

ここではギャリソン(Part2)、マッコイ(Part3)、エルヴィン(Part4)のソロが夫々のパートに組み込まれ、トレーンだけでなく、全メンバーのベスト・プレイが音楽を高みに押し上げ、最終章Part5におけるトレーンの説得力あふれるブローへと引き継がれていきます。この全体の過程は余りに感動的で、これまで百回以上は軽く聴いているのですが、通して聴き終えると今でも まなじりが熱くなる程、魂を揺さぶられてしまうのです。

尚、現在入手可能な《Transition》には2バージョンがあるようです。何とUSバージョンでは、「Dear Lord」が省かれています!

発売元のImpulseレーベルのサイトで調べてみると、現在「Dear Lord」は、《Dear Old Stockholm》というアルバムに収録されています。
本来の《Transition》の感動を共有頂くためには、日本の紙ジャケット版を購入される事を強くお勧めします。

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