宇都宮のジャズ・バー「近代人」

先週末に出張で宇都宮行ってきました。何でも宇都宮市は餃子とジャズの街だそうで、この二つで町おこし的な取り組みをしているようです。駅のインフォメーションでもらえる宇都宮JAZZマップには10数店のジャズスポットが紹介されており、街の規模を考えると、かなりジャズ密度は高いと言えるんじゃないでしょうか。
また、餃子の街としての顔もかなり気合が入っていて餃子専門店が数十軒はありそうです。調べてみると宇都宮餃子会なんてものがあり、加盟店はやはり50店前後でしょうか。ただ、例の中国毒入り餃子が世間を騒がせているという最悪のタイミングでもあり、やはり餃子を食べたいという気にはなりませんでしたね。宇都宮の餃子関係者の皆さんもさぞかし迷惑をされている事と思います。

さて、ジャズスポットですが、パンフレットで宇都宮の老舗と紹介されていた「近代人」に行ってきました。店内に入ると、初老の紳士がカウンターで一人帳簿つけをしていました。どうも最初の客だったようで、「悪いね、ちょっとこれだけやっちゃうね。」、「あ、どうぞお構いなく」というジャズバーにありがちな展開。じっくりと店内を見回すと、壁には渡辺貞夫さん、山下洋輔さんなどのミュージシャンが訪れた際の写真、少し狭い店内の中央にドンと陣取るピアノとその下にしまわれたドラムセット。これを取り巻く客席との距離感は、ライブ時の一体感を感じさせ、僕好みの、いわば「古き良きジャズバーの正しいあり方」そのものという感じです。
さて、このマスター(平山正喜)、一徹オヤジ的雰囲気とは裏腹に、目がとても優しそう。サックスの絵柄をあしらったネクタイに、様々な楽器をモチーフにしたブローチで埋め尽くされた黒のベストと、個性たっぷりのいでたち。お店も48周年、かなりの御年(78歳と判明)と思われるマスターですが、なんと後からやってきた常連さんの紹介によると、腕相撲の達人だそうな。そう言えば壁には「アームレスリング審判資格」証書や、いかにも腕相撲選手といった体格の黒人とのツ−ショット写真なども飾られてもいる。

「マスター、あれ見せてあげたら?」という常連さんに、マスターは笑いながらビール瓶の蓋をいくつか取り出し、「これ、つぶしてみ。」とおっしゃる。「え、無理ですよ。まさか・・?」と、マスターは蓋を一つ摘み上げ、二本指でいとも簡単にクシャとつぶしてしまった。聞けば、写真の黒人男性は腕相撲の世界チャンピオンで、平山さんはかなり良い勝負をしたのだという。うーむ、おそるべきおじいちゃんである。僕のいきつけの「いんたーぷれい8」の名物常連、O氏も還暦を迎えてなお、ムッキムキの体格だが、この二人で「東西ジャズキチじいちゃん腕相撲対決」をさせてみたい、と真剣に考えてしまった。
<ライブで絶叫ボーカルを聞かせるO氏。ピアノは山下洋輔。>

それからも常連さんが三々五々と集まり、和やかな雰囲気の中で、大変楽しい時間を過ごさせて頂きました。横に座った外科医というお客さんに「マスターは始めてのお客さんには冷たいんだけど、何か受け入れてもらえて良かったですね。」と言われたように、確か水割りをショットで6杯程飲んだ筈なのに「2000円で良いから」と随分まけてもらいました。楽しい雰囲気の中で、ついつい飲みすぎたのか酔っ払ってしまい、挨拶もそこそこに帰ってきたような気がしますが、この場を借りてお礼申し上げます。
皆さんも宇都宮へ行かれる機会があれば是非「近代人」を覗いてみて下さい。日本のジャズ文化を支える、こういう店を盛り立てていきたいですね。

人気ブログランキング参加中
ぽちっと応援のクリックをお願いします