Tales Of Another/Gary Peacock


Tales of Another

私的JAZZ名盤集Vol.1

1. Vignette  /2. Tone Field
3. Major Major /4. TrilogyⅠ
5. TrilogyⅡ /6. TrilogyⅢ

1977年録音のゲイリー・ピーコック名義のアルバムですが、実質的に83年に結成されるキースのスタンダーズ・トリオの前身とも言える傑作で、直感とインスピレーションによる恐ろしいほど高次元のインタープレイが展開されています。
あたかも創造の女神が降臨し、3人に憑依して演奏を繰り広げたのでは?とすら思わせるこのアルバムは、何年経っても色褪せるどころか、輝きを増し続ける、僕にとってのピアノトリオNo.1アルバムです。


先日もヨーロッパの新人エンリコ・ピエラヌンティを紹介した所で、こんな事を言うのも気が引けるのですが、いろいろなピアノトリオを聴いても、結局はこの現代ジャズ界最高峰トリオに帰ってきてしまう。それを言っちゃオシマイと分ってはいるのですが、久しぶりに聴くと、この30年近い歴史の中で、感動のレベルにおいて彼らを超えるトリオが未だにいない事を改めて思い知りました。

神秘的な響きのシンバルにピアノが静々と導かれ、素晴らしいベースソロへと引き継がれるVignetteから、三者一丸となった高揚感に満ちたTrilogyⅡ、そしてキースの天に向け上昇していくかのようなフレーズの後、突如訪れるエンディングが印象的なTrilogyⅢまで、ただただ圧倒されるばかりです。全曲ゲイリー・ピーコックのオリジナル曲であり、それだけに自由奔放に音楽が形成されていく緊張感とスリルは、スタンダーズ以上と言えるでしょう。

取り付かれたキースのうめき声が、いつもより感度良く録音されている点が唯一の難点ですが(笑)、創造のミューズ(女神)を目の当たりにして、それは些細な事。キースファンたるもの、この音の外れた呻き声も笑って受け入れなければなりません。

アノトリオにおける即興演奏の極北ともいうべき、このアルバム。一般的なジャズ名盤100選にランクされる事はまずありませんが、こういう傑作こそ、全てのジャズファンに勧めたいと思うのです。

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